大和田と呼ばれていた渋谷の町々

 トースト食べ放題の喫茶店が渋谷にあった。公園通りを下りてきた突き当り辺り。その横に国鉄の荷物専用駅があった。まだ、宅配便が始まった頃で、大きな荷物の主力は国鉄の鉄道便だった。駅止め、それを自転車で取りに行った。

 ある時に、神戸に大きな荷物を送る必用が生じた。国鉄に聞くと、大垣での取り次ぎ次第で神戸に何時着くか、2、3日のずれがあって、はっきりしたこと言えないという。宅配便会社に電話をすると「取りに来てくれて、相手の家まで届けてくれる。午前中に受け取れば、明日中に届けられる」という。国鉄は駅まで持って行って、相手の方も駅に取りに来る、そして、予定2、3日見てくれ。これで料金は同じだった。

 当然、私は宅配便に仕事を依頼した。昭和52・1977年のことだったと思う。

 その食べ放題のお店、「オオワダ」と言ったような気がする。間違っているかもしれない。「オオワダ」はカツ・サンド専門店だったかもしれない。しかし、何故、オオワダなんだろう? 大和田さんという人のお店だったのかも、と思っていた。

 谷崎の「細雪」を読んだ。主人公達が大阪から東京・渋谷に引っ越した。道玄坂を上って左、大和田町と。なるほど、ある時期まで渋谷に大和田町があったらしい。

 今、渋谷には「貨物専門駅」も「トースト食べ放題」の喫茶店も「カツ・サンド」専門店も「大和田町」もない。