クチナシ・梔子・くちなしの花の匂い

 6月の東京は私にとって特別の思い出がある。梔子の花の匂いで、44年前のことだ。

 大阪からブルートレイン・夜行で品川に着き山手線に乗り換えた。渋谷で下りたのが早朝、6月4日、日曜日だった。南口を出て、バス・ターミナル、玉川線の線路の跡が残っていた。アスファルトで埋められていた。それが黒い線となって246の方まで続いていた。

 建築中のビルがあったのだが、それが東急本店だと知るのはずっと後になってからだった。

 7月20日に金沢に行くのだが、それまでの50日ほど、東京各地を点々とする。東中野、東十条、東松原、世田谷の家々の庭に植わっていたのであろう梔子の木々、その花の匂いと44年前の東京の情景が重なって記憶の奥に鎮まっている。それが花の匂いとともに思い出されてくる。

 5月は品川の薔薇、ブロック塀から顔を覗かせていた。4月は洗足池の桜。3月は・・と、各月の思い出が出てくれば良いのだが、今日はここまでにしておこう。