蛆虫・うじむし・と宗教

 蛆虫を汚い・気持ちが悪いと感じるのは正常な感覚である。ただ、この蛆虫も時に天使のような働きをする。

 岩川隆さんの著書に「決定的瞬間」中央文庫・昭和61年8月10日発行がある。この中の逸話にフィリピンのジャングルで背中から尻にかて貫通銃創を負った兵隊の話が出てくる。彼は負傷して立ち上がれなくなり、友軍と逸れてしまった。そこで、這って友軍の後を追い、2週間かかって追いついた。

 彼を見て誰も彼と直ぐには確認出来なかった。彼の背中から尻にかけての傷には大きな蛆虫が詰まっていた。ジャングルの大きなハエが彼の傷に卵を産み付けていたのである。棒切れで突っついてその蛆虫を取り除いた。

 彼の傷は化膿もせず、ほとんど治っていた。膿を蛆虫が吸っていたのである。ガーゼの代わりで、ばい菌が付着することも防いでいた。


 宗教と聞いて、毛嫌い、気持ちが悪いという感覚は正常だと思う。ただ、人によってはこの宗教で救われる人達が居る。丁度、ジャングルで蛆虫に救われた兵隊と同じかもしれない。

 心に傷を持った人達が居る。その傷の膿を吸い出す、蛆虫の役割を宗教家がやっている。客観的に見ると人を食い物にしているように見える。しかし、それが治療行為なのか、虐待なのか、判断が出来ない。

 私は全てが癒しの行為・結果になるのではないだろうか? と、思っている。